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日本でモータースポーツを文化に……デロイト トーマツが関与を深める理由「日本経済のために必要なこと」

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日本でモータースポーツを文化に……デロイト トーマツが関与を深める理由「日本経済のために必要なこと」

 モータースポーツとの関わりを深めつつある、デロイト トーマツ。彼らはモータースポーツに何を期待し、そして今後の可能性をどう見ているのだろうか?

 デロイト トーマツ グループの一企業であるデロイト トーマツ ファイナンシャルアドザイバリーは、2021年にスーパーフォーミュラ・ライツでトムスとの協業をスタート。その後、トムスのスーパーGT/GT500クラスのメインスポンサーを務めるだけでなく、スーパーフォーミュラの『NEXT50 PARTNER』を務め、最近では昨年立ち上げが発表されたJAF公認のeモータースポーツリーグ『UNIZONE』のサポーティングカンパニーも務めている。特にスーパーフォーミュラとUNIZONEでは、実質的に改善を主導する立場だったり、イベントの実施を支えたりと、法人運用におけるサポートの役割を担っている。

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 なぜ彼らはモータースポーツに関わるのか? そしてモータースポーツに関わることで何を期待しているのだろうか?

「日本経済をどうにかしなきゃっていうのが、僕も含め、ここにいるメンバー全員の共通の価値観というか、目的なんですよね」

 そう語るのは、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーのパートナーである三木要氏である。

「その中で我々はどういう形で貢献できるのか、どういう強みを持っているのかということを考えた時に、それを活かせるマーケットのひとつとして注目したのが、モータースポーツ全般だったんです」

「日本の経済、特に製造業の中心としては、自動車業界は絶対に外せないと思っています。そう考えると、モータースポーツはサーキット上であろうがサーキット外であろうが、今でも実験場なんですよね。しかも今の実験は、メカの実験だけじゃなく、ドライバーの生体情報を得られるなど、色々な情報が詰まっている。昔だったらあまり注目されなかったけど、今ならば注目に値するような、そんな情報がいっぱい詰まっているんです」

「日本経済を支えるためには自動車業界は無視できません。それを影で支えているいくつかのうち、なかなか注目されず、それがなければ困るというモノ、そして我々の強みを考えた時に、モータースポーツがあったんです」

 そこがきっかけで、モータースポーツ全般に話が広がっていったと三木氏は言う。

モータースポーツを持続可能なモノに

「まずはトムスさんと、7つの分野で協業しましょうということになりました。その後JRP(スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーション)さんからも課題を伺い、そこでも、我々にも何かお役に立てることがあるのではないかと思ったんです」

「そして今回はUNIZONEの立ち上げにもサポーティングカンパニーとして参加させてもらいました。モータースポーツ全体を盛り上げ、サステナブルなモノにしていかないと、ありとあらゆるモノが回らないなという、ごく当たり前のことに気づいただけなんです」

「スーパーフォーミュラのサポートに加えてUNIZONEもサポートすることによって、モータースポーツの文化をeモータースポーツという形で現代に合わせることができ、立ち上げや活動を支える上で我々の知見がお役に立てればいいなと思いました」

eモータースポーツで、裾野を広げる

 UNIZONEは前述の通り、初のJAF公認eモータースポーツのリーグである。JAF、そしてデロイト トーマツとしては、このUNIZONEを成立させることが、モータースポーツの裾野を広げることができると期待しているという。

「JAFの想いとしては、モータースポーツの裾野を広げたいというということでした。それについては、私も同じように思っています」

「今の日本は人口も減り、クルマに乗る人も減ってきています。でもeモータースポーツならば、免許がなくても乗れます。そういうのが身近にあればいいですよねという発想です」

 そう三木氏は語る。ここまでUNIZONEとしては、昨年のメディア向けイベントと高崎でのエキシビジョンイベント、そして3月31日にはE-Tokyo Festivalの中でもイベントが行なわれた。しかし、まだまだ目指すべき形には仕上がりきっていないという。

「ここまで3回にわたってイベントを行ないましたが、まだまだ足りないところだらけです」

「eモータースポーツは、リアルモータースポーツと何が違うのかというのを、一般の方々にお示ししなければいけません。大画面にレースの模様が映るというだけでは、eモータースポーツの意義や魅力は伝わりません」

「eモータースポーツをやるならば、プロが走ってバトルしているのを、リアルのモータースポーツとは違う目線でお見せしたいんです。リアルだろうがeモータースポーツだろうが、プロ同士が真剣に戦う姿を、全然違う見せ方をしなければいけません。例えばリアルのモータースポーツならば、ドライバーたちはヘルメットを被っているので、表情がなかなか見えません。でもeモータースポーツならばヘルメットを被る必要がないので、表情をお伝えすることができます。にもかかわらず、我々のイベントでは選手たちが壁の方を向いて競技をしていた……せっかくの状況をうまく使えていませんでした」

「我々は、まだ全然アピールできていませんでした。これは、我々運営サイドが、何がアピールポイントなのかを整理できていなかったからです」

「メディアの皆さんにeモータースポーツの見どころや魅力を分かりやすく伝え、メディアに取り上げていただいた記事をより多くの方に見ていただいて、話題となり口コミなどで広げていきたいと思っているのですが……それが全然できていませんでした」

 三木氏は、UNIZONEのシステムを使い、リアルのレーシングマシンとeスポーツのマシンが競い合う、”デジタルツイン”的なレースを実現させたいと話す。

「私がやりたいのは、デジタルツインなんですよ」

「eスポーツのドライバーとリアルのドライバーが全然違う場所、例えば、片方は東京、片方は鈴鹿サーキットで走るという形でも戦えると思います。海外と繋ぐことだってできますし、サーキットで観戦している方には、eスポーツのマシンをプロジェクションマッピングなどで表示することもできます」

モータースポーツが日常になる日

 スーパーフォーミュラは、昨年から人気を徐々に取り戻しつつある。そういう意味ではデロイト トーマツなどが入って実施された「NEXT50」プロジェクトがうまくいき始めているということだろう。そしてそこにUNIZONEが加わる。

 このUNIZONEも含め、モータースポーツが日常生活に近くなる日が訪れると、三木氏は考えているという。

「私はそういう未来が来ると思っています。ただ、モータースポーツは本当にスポーツとして認められているのか、文化として認められているのかというところは考えなければいけません」

「先日、日本の二輪のレースチームが今季から(全日本ロードレースで)イタリアのオートバイメーカーのバイクを使うことになり、イタリア大使館で発表会が行なわれました。イタリアでモータースポーツが文化になっているからこそ大使館での発表が行なわれたのだと思うんです。駐日大使も登場するなんて、日本ではまず考えられないことです」

「日本ではまだモータースポーツは文化にまではなっていない。でも文化にしていきたいと思います。モータースポーツは、重要なコンテンツだと思っているんです。アジアの中では、今は日本のモータースポーツが圧倒的ですが、他国に抜かれる前に文化として確固たる地位にしたい。それをアジアに展開することができれば、日本経済や日本の新しい価値観やサービス、いろんな部分の強化に繋がると思います」

 そういう時代が来るのは、そう遠い未来の話ではないのではないかと、三木氏は考えている。

「私は、意外と近いんじゃないかと思っています」

 そう三木氏は言う。

「なぜ近いと感じるかと言うと、UNIZONE のサポートをして1年目には様々なハードルがありましたが、進み始めると意外と早く進んでいくなと感じました。そして、何よりも私自身としてもそんなに待っていられませんからね」

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